熱伝達率と熱伝導率の違い【計算例を用いて解説】

熱伝達率と熱伝導率って違うの?
そんな悩みを解決します。

 

本記事の内容
  • 熱伝達率と熱伝導率の違い(計算例付き)
  • 流体の熱伝達率と熱伝導率は切り離せない

この記事を読めば熱伝達率と熱伝導率の違いを理解し、伝熱量の計算もできるようになります。

 

私の仕事は化学プラントの設計です。
その経験をもとに分かりやすく解説します。
化学メーカー生産技術職(6年勤務)
工学修士(専攻:化学工学)

熱伝達率と熱伝導率の違い(計算例付き)

熱伝導率と熱伝達率の違いは、

熱伝導率は一つの物質内(固体や静止した液体や固体)の熱の伝わりやすさを表す物性値です。

熱伝達率は固体と流体の間の熱の伝わりやすさを表すもので、流体の物性のみでは定まらず、物体の形状や流れの状態に大きく依存します。

また、熱伝達と熱伝導が同時に起こるときに用いられる熱通過率も合わせて解説していきます。

名称 説明 記号 単位 伝熱量の式
熱伝導率 一つの物質内(固体や静止した液体や固体)の熱の伝わりやすさ $k$ $W/m・K$ $$Q=kA\frac{T_h-T_c}{δ}$$
熱伝達率 固体と流体の間の熱の伝わりやすさ $h$ $W/m^2・K$ $$Q=hA(T_h-T_c)$$
熱通過率 隔壁を介した流体間の熱の伝わりやすさ(熱伝導と熱伝達が同時に起こるとき) $$K=\frac{1}{\frac{1}{h_h}+\frac{δ}{k}+\frac{1}{h_c}}$$ $W/m^2・K$ $$Q=KA(T_h-T_c)$$

 

熱伝導率

熱伝導率は一つの物質内(固体や静止した液体や固体)の熱の伝わりやすさを表す物性値です。

単位はW/m・Kであり、物体の厚さ1m、温度差1℃当たりの熱の移動量を表しています。

熱の移動量つまり伝熱量は以下の式から求められます。

$$Q=kA\frac{T_h-T_c}{δ}$$

$Q$:伝熱量[$W$]=[$J/s$]
$k$:熱伝導率[$W/m・K$]
$A$:伝熱面積[$m^2$]

$T_h$:固体表面温度(高温側)[$K$]
$T_c$:固体表面温度(低温側)[$K$]
$δ$:物体厚さ[$m$]

<計算例>

厚さδ=0.1mの鉄がある。鉄の高温側表面温度が100℃、低温側表面温度が20℃のときの鉄の表面積$1m^2$あたりの伝熱量を求める。

鉄の熱伝導率を調べるとk=80.3$W/m・K$
熱伝導率の式に代入して

$$Q=kA\frac{T_h-T_c}{δ}$$

$$Q=(80.3)(1)\frac{100-20}{0.1}$$

$$Q=64,240W$$

熱伝達率

熱伝達率は固体と流体の間の熱の伝わりやすさを表すもので、流体の物性のみでは定まらず、物体の形状や流れの状態に大きく依存します。
(物体の形状や流れの状態に大きく依存する理由は第2項「流体の熱伝達率と熱伝導率は切り離せない」で解説します。)

単位は$W/m^2・K$で、$1m^2$、温度差1℃当たりの熱の移動量を表しています。

伝熱量は以下の式から求められます。

$$Q=hA(T_h-T_c)$$

$Q$:伝熱量[$W$]=[$J/s$]
$A$:伝熱面積[$m^2$]
$h$:熱伝達率[$W/m^2・K$]
$T_h$:高温側温度[$K$]
$T_c$:表面温度[$K$]

<計算例>

表面温度100℃の鉄が、120℃の空気と接している。空気の熱伝達係数hは$20W/m^2・K$(自然対流)とする。このときの鉄表面$1m^2$あたりの空気から鉄への伝熱量を求める。

$$Q=hA(T_h-T_c)$$

$$Q=(20)(1)(120-100)$$

$$Q=400W$$

 

熱伝達率の求め方を知りたい方はこちらをどうぞ。

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熱通過率

熱通過率は隔壁を介した流体間の熱の伝わりやすさを表すものです。

つまり、熱伝導と熱伝達が同時に起こるときの熱の伝わりやすさを表すものです。

$$K=\frac{1}{\frac{1}{h_h}+\frac{δ}{k}+\frac{1}{h_c}}$$

$K$:熱通過率[$W/m^2・K$]
$h_h$:高温側熱伝達率[$W/m^2・K$]
$h_c$:低温側熱伝達率[$W/m^2・K$]
$k$:熱伝導率[$W/m・K$]
$δ$:物体厚さ[$m$]

伝熱量は以下の式から求められます。

$$Q=KA(T_h-T_c)$$

$Q$:伝熱量[$W$]=[$J/s$]
$A$:伝熱面積[$m^2$]
$K$:熱通過率[$W/m^2・K$]
$T_h$:高温側温度[$K$]
$T_c$:低温側温度[$K$]

熱通過率を用いれば隔壁の表面温度がわからなくても、流体間の熱の移動量を求めることができます。

<計算例>

厚さ0.1mの鉄板を介して120℃の空気と20℃の水で熱交換している。鉄板の熱伝導率は$80.3W/m・K$、空気の熱伝達率は$20W/m^2・K$、水の熱伝達率は$100W/m^2・K$とする。この時の鉄板$1m^2$の伝熱量を求める。

熱通過率は

$$K=\frac{1}{\frac{1}{h_h}+\frac{δ}{k}+\frac{1}{h_c}}$$

$$K=\frac{1}{\frac{1}{20}+\frac{0.1}{80.3}+\frac{1}{100}}$$

$$K=16.3W/m^2・K$$

伝熱量は

$$Q=(16.3)(1)(120-100)$$

$$Q=326W$$

 

熱通過率に汚れ係数を加えたものを総括伝熱係数と呼びます。

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熱伝導率、熱伝達率、熱通過率の違いを改めて表にまとめます。

名称 説明 記号 単位 伝熱量の式
熱伝導率 一つの物質内(固体や静止した液体や固体)の熱の伝わりやすさ $k$ $W/m・K$ $$Q=kA\frac{T_h-T_c}{δ}$$
熱伝達率 固体と流体の間の熱の伝わりやすさ $h$ $W/m^2・K$ $$Q=hA(T_h-T_c)$$
熱通過率 隔壁を介した流体間の熱の伝わりやすさ(熱伝導と熱伝達が同時に起こるとき) $$K=\frac{1}{\frac{1}{h_h}+\frac{δ}{k}+\frac{1}{h_c}}$$ $W/m^2・K$ $$Q=KA(T_h-T_c)$$

 

流体の熱伝達率と熱伝導率は切り離せない

熱伝達率の原理的な話をします。
※混乱しやすいので、読み飛ばしていただいても問題ありません。

流体の熱伝達率と熱伝導率は切り離せない存在です。

なぜなら流体の熱伝達率は流体の熱伝導率と温度境界層厚さから求めらるからです。

$$h=\frac{k_T}{δ_T}$$

$h$:熱伝達率[$W/m^2・K$]
$k$:熱伝導率[$W/m・K$]

$δ_T$:温度境界層厚さ[$m$]

温度境界層とは

流動している流体とそれに接する物体との間に温度差があるとき,流体の温度は物体から十分離れたところでは主流温度になっているが,物体に近づくにつれて急激に変わり,物体表面上では物体温度と等しくなる.このような温度の急変領域を温度境界層と呼ぶ。

引用:機械工学辞典

熱伝達率が流体の物性のみでは定まらず、物体の形状や流れの状態に大きく依存する理由は、物体の形状や流れの状態により温度境界層厚さが大きく変わるためです。

 

まとめ

熱伝達率と熱伝導率の違いと、その両方を用いた熱通過率について計算例を用いて解説しました。

似た言葉が多く出てきますので、それぞれの意味をしっかり理解して設計に役立てましょう。

伝熱工学をもっと勉強したい方は、参考書で体系的に学ぶのがおすすめです。

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