NPSHとは?有効NPSHの求め方【ポンプ吸込み配管の設計】

NPSHってなに?
ポンプ吸込み配管の有効NPSHってどうやって求めるの?
そんな悩みを解決します。
・NPSHとは
・有効NPSHの求め方と計算例

私は大学で化学工学を学び、化学メーカーで6年間設計の仕事をしてきました。
有効NPSHを求める基本をなるべくわかりやすく、図も用いて解説していきます。

ポンプ吸込み口の液温における蒸気圧(Pa)を液柱高さ(m)で表したもの
NPSHはポンプの吸込み口においてキャビテーションを発生させないための指標です。
キャビテーションはポンプ吸込み口の圧力が液の蒸気圧以下になると発生します。
言い換えると、キャビテーションはポンプの吸込み口で液が沸騰すると発生するということです。
キャビテーションを発生させないためにNPSHという指標が必要なのです。
キャビテーションとは気泡が原因となって発生する、音や振動などをともなう現象です。
激しい振動のため、ポンプの破損や配管破断などの事故につながることがあります。
NPSHは英語で「Net Positive Suction Head」と呼びます。
日本語では「正味吸込みヘッド」などと呼ばれています。
yamato
設計では常識だけど、大学では教わらなかった気がするなぁ。

有効NPSHと必要NPSH

ポンプの性能上必要とされるNPSH
必要NPSHはキャビテーションが起こらないかつ、ポンプが十分に性能を発揮するNPSHを示したものです。
これは、ポンプメーカーが設計・計算するものです。
私たちはこの必要NPSHを超えるようにポンプ吸込み口の配管設計をする必要があります。
必要NPSHと比較するために有効NPSHを用います。
上流の装置からポンプに与えるNPSH

有効NPSHはポンプ上流の装置がポンプに対してどれだけの圧力をかけられているかを高さ(m)で表したものです。

なので有効NPSHは上流装置の液面高さによる圧力から圧力損失を引くことで求めることができます。

 

ポンプ吸込み口の設計は

必要NPSH<有効NPSH

となるようしなくてはなりません。

キャビテーションを発生させず、ポンプ性能を十分に発揮させるためです。

 

必要NPSHは英語で「required NPSH」、日本語では「必要吸込みヘッド」と呼ばれます。
必要NPSHは「NPSHreq」と表記されることが多いです。
有効NPSHは英語で「available NPSH」、日本語では「有効吸込みヘッド」と呼ばれます。
有効NPSHは「NPSHava」と表記されることが多いです。

有効NPSHの計算例

有効NPSHは以下の式で求められます。

$$NPSHava=\frac{Ps-Pv-ΔPf}{ρg}+hs・・・①$$

$Ps$:吸込み液面上の圧力[Pa]
$Pv$:液の吸込み温度における蒸気圧[Pa]
$ΔPf$:吸込み配管の圧力損失[Pq]
$hs$:ポンプ中心から吸込み液面の高さ[m]
$ρ$:密度[kg/m3]
$g$:重力加速度[kg・m/s2]

 

yamato
ポンプ吸込み口にかかる圧力を足し引きして求めるよ
計算手順は以下の通りです。
  1. 吸込み液上面の圧力$Ps$を求める
  2. 液吸込み温度における蒸気圧$Pv$を求める
  3. 吸込み配管の圧力損失$ΔPf$を求める
  4. ポンプ中心から吸込み液面の高さ$hs$を求める
  5. 式①に代入して有効NPSHを求める

計算条件は以下とします。

  • 流体:水
  • 吸込み温度:30℃
  • 配管径:2B(50A)
  • 配管長:10m
  • 流量:10m3/hr

手順1:吸込み液面上の圧力$Pv$を求める

液面上にどれだけの圧力をかけているかをゲージ圧で考えます。

今回は大気圧とします。

$$Ps=0PaG$$

10kPaでシールしているタンクであれば

$$Ps=10×10^3PaG$$

となります。

 

手順2:液吸込み温度における蒸気圧$Pv$を求める

蒸気圧を求める式はいくつかありますが、ここではAntoineの式で求めてみます。

$$lnPv=A-\frac{B}{C+T}・・・②$$

$Pv$:液吸込み口における蒸気圧[Pa]
$T$:液吸込み口における温度[K]
$A,B,C$:Antoine定数
定数ABCは物質ごとに決まっている定数で、化学工学便覧に470あまりのデータが載っています。
30℃の水のA、B、Cの値を化学工学便覧から読み取ります。
$$A=23.1964$$
$$B=3816.44$$
$$C=-46.13$$
なお、温度範囲は$T=284-441K(11-168℃)$と記載ありました。
Antoineの式を変形します。
$$Pv=exp{A-\frac{B}{C+T}}$$
この式に定数A、B、C、温度Tを代入します。
$$Pv=exp{23.1964-\frac{3816.44}{-46.13+(30+273.5)}}$$
$$Pv=4220Pa$$

手順3:吸込み配管の圧力損失$ΔPs$を求める

圧力損失はここではファニングの式を使って求めます。

$$ΔPf=4f(\frac{ρu^2}{2g})(\frac{l}{D})・・・③$$

$Ps$:吸込み液面上の圧力[Pa]
$f$:管摩擦係数
$ρ$:流体密度[kg/m3]
$u$:流速[m/s]
$g$:重力加速度[m/s2]
$l$:管長[m]
$D$:管内径[m]
ここで管摩擦係数$f$を求めるためにレイノルズ数$Re$を計算します。
$$Re=\frac{Duρ}{μ}・・・④$$
$μ$:粘度[Pa・s]
2B配管の内径$D=54.1mm$、
流速$u=1.2m/s$(流量10m3/hrを配管断面積で割る)、
密度$ρ=1000kg/m3$、
粘度$μ=0.797×10^-3Pa・s$
④式に代入して
$$Re=\frac{51.4×10^-3×1.2×1000}{0.797×10^-3}$$
$$Re=77390$$

乱流のため管摩擦係数はBlasius(ブラジウ)の式を用いて算出します。
$$f=0.0791Re^-0.25 (Re<10^5)$$
$$f=0.0791×77390^-0.25$$
$$f=4.742×10^-3$$

これらをファニングの③式に代入していきます。
$$ΔPf=4×4.742×10^-3(\frac{1000×1.2^2}{2×9.81})(\frac{10}{54.1×10^-3})$$
$$ΔPf=257Pa$$
圧力損失が求められました。
曲がり管などの圧力損失の計算はこちら

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手順4:ポンプ中心から吸込み液面の高さ$hs$を求める

今回は計測したところポンプ中心から吸込み液面の高さ$hs$は10mだったとします。

手順5:式①に代入して有効NPSHを求める。

$$NPSHava=\frac{Ps-Pv-ΔPf}{ρg}+hs・・・①$$

$$NPSHava=\frac{0-4220-257}{1000×9.81}+10$$

$$NPSHava=9.5m$$

有効NPSHを求めることができました。

まとめ

この記事ではポンプ吸込み口の設計に必要なNPSHを説明し、有効NPSHを解説しました。

NPSHはポンプでキャビテーションなどトラブルを起こさないために重要な指標です。

NPSHを計算して、トラブルを防ぎましょう。

流体力学をもっと勉強したい方は、参考書で体系的に学ぶのがおすすめです。

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